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コウテイペンギン:男はつらいよ!冬の南極で飲まず食わずの過酷な子育てとその理由

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たたずむコウテイペンギン

目次

コウテイペンギンの基本情報

  • 皇帝ペンギン
  • 分類:鳥綱ペンギン目ペンギン科コウテイペンギン属
  • 主な生息地:南極大陸の周辺
  • 平均寿命:20年
  • 体長:1.0~1.3m
  • 英語表記:Emperor penguin

コウテイペンギンと人間のサイズ比較

全ペンギンの中で最大の種。英語表記のままエンペラーペンギンと呼ばれることもあります。
体重は約22~45kgに達し、非常に大きく重い鳥です。

南極大陸周辺の冷たい水域に生息し、繁殖のためなどに陸地に上がることがありますが、基本的にはエサ場である海の中や氷の上で過ごしています。

コウテイペンギンの食べ物は主に甲殻類、イカ、そして小さな魚です。彼らは海の中で獲物を見つけ、巧みに泳ぎながら捕食します。

天敵はシャチやヒョウアザラシ。

コウテイペンギンの生態

コウテイペンギンの生態調査では、センサーを詰め込んだ筒状の観測機器(データロガー)を取り付けて調査する「バイオロギング」という方法が用いられています。

驚くべき潜水能力とその理由

捕食時の一般的な潜水は2分半から4分程度で行われ、深い場所での潜水は最長で12分ほどです。
最大潜水記録は水深564メートルで、その際の潜水時間は27分36秒となっています。

コウテイペンギンは他の鳥類と同じ、肺呼吸です。
エラを持たないのになぜ長時間潜水できるのかというと、人間と比較して3倍の酸素を体内に蓄えることができ、潜水時には代謝率を下げて酸素消費を抑制することができるからなのです。

天に与えられた加速装置

岩肌や氷をよじ登るのが苦手なコウテイペンギン。彼らは水中から加速してきて、水面を飛び出した勢いのまま氷上に滑り込みます。

普段の遊泳速度は時速10kmに満たない程度なのですが、加速時は時速20kmに迫るスピードが出ます。

加速装置の正体

ペンギンは水に潜る前に羽毛の間に空気を溜めます。
その状態で深く潜り、水圧で空気が圧縮されたところを羽毛で固めます。
浮上してくるにつれ膨張してきた空気は羽毛を通り抜け、その際に細かい泡となり羽毛を覆います。
細かい泡の被膜が水の抵抗を劇的に低下させ、この「泡加速」を可能にするのです。

ちなみに空気泡の被膜による水中での加速は、魚雷の製造にも取り入れられているテクノロジーです。

泡加速はエサを採るときや外敵から逃げるときにも使用されると言われています。

ザ★ズー
意外にハイテクで驚くよね。軍事じゃなくて平和なアトラクションなんかに利用してほしいな。

加速中のコウテイペンギン

コウテイペンギンの繁殖行動

繁殖期は南極の晩秋から冬にかけての5~6月。
コウテイペンギンたちは海岸から離れた内陸にある集団繁殖地(コロニー)を目指します。移動距離は50km以上に及ぶこともありますが、これは彼らが生息する地域やその年の氷の状況によって異なります。

60日間断食をして卵をあたため続けるオス

繁殖地に到着しメスが産卵すると、その卵をオスがあたためます。
2個産卵することもありますが、通常はどちらか一つしかあたためません。

コウテイペンギンは、卵を温める際に特殊な方法を用います。オスは卵を足の上にのせ、おなかの皮膚のたるみ部分で卵を覆って保温します。
この期間約60日。オスが卵を温めている間、食事を摂ることはほとんどありません。
そして、体力を温存するため、抱卵中はほとんど寝て過ごすようです。

孵化から子育て

メスはオスに卵を託してエサを探しに行きます。
オスが抱卵している約60日の間、メスは帰ってきません。

そして卵からヒナが孵る頃、オスの体重は半分近くまで減っています。

メスが帰ってきたところでようやくオスは食事を摂りに行くのですが、この時点でギリギリなのにまた海まで歩かなければなりません。
繁殖地までの行き帰りを含めると、オスは最長で120日程度絶食することになります。

孵化後は親鳥がヒナに食物を与えて育てます。ヒナは約5ヶ月で成長し、その間に親鳥から食物をもらいながら、泳ぎや狩りなどの生存スキルを身につけます。
独り立ちする頃には、自分で食物を捕ることができるようになります。

ザ★ズー
ガリガリに痩せたオスを見て、帰ってきたメスはなにを思うのか・・・

夫婦はずっと一緒なの?

コウテイペンギンは一般的にペアで繁殖する鳥で、しばしば「一夫一婦制」と言われますが、これは毎年必ず同じペアで繁殖するという意味ではありません。

研究によれば、コウテイペンギンが連続して同じパートナーとペアを組む確率は約15%から30%とされています。つまり、コウテイペンギンのペアは、ある配偶期が終わった後、翌年別のパートナーを見つけることも珍しくありません。

ペアは繁殖シーズン中に形成され、その間は一緒に幼鳥を育てます。
繁殖期後、ペンギンたちは大規模な群れで海に出て数か月を過ごし、この間にペアが離れることがあります。

翌繁殖シーズンには、再び生まれ故郷の繁殖地に戻って来ますが、過去のパートナーと再会して再度ペアを組むこともあれば、新しいパートナーを見つけることもあります。
環境条件や個体の状態、前年の繁殖成功など多くの要因がペアの継続や解消に関わってきます。

ペンギンの夫婦

コウテイペンギンが過酷な冬に繁殖活動をおこなうのはなぜ?

南極の冬はマイナス60℃にもなります。
なぜわざわざ過酷な時期を選んで繁殖するのでしょうか?
それには理由があります。

  1. 食料の豊富さ:南極の夏(11月から2月)は、海洋生物が豊富になる時期です。コウテイペンギンは冬に産卵し、春に孵化させることで、子育ての最もエネルギーを要する時期を食料が豊富な夏に合わせています。これにより、親鳥は十分な食料を見つけやすく、成長中の雛に必要な栄養を提供できます。
  2. 捕食者の少なさ:冬はコウテイペンギンの捕食者が少ない時期です。これにより、卵や雛が捕食者に襲われるリスクが減少します。
  3. 氷の状態:コウテイペンギンは氷の上で繁殖します。冬には氷が最も安定しており、繁殖地として適しています。夏になると、氷が溶け始め、繁殖地が不安定になる可能性があります。

実はすべて、より安全に子育てをするための涙ぐましい努力だったのです。

ザ★ズー
命がけで子孫を残そうとする姿には目頭が熱くなるよ。

寒さに耐えるペンギンの群れ

コウテイペンギンについてのまとめ

500m以上の深さに到達する潜水能力に「泡加速」という機能を身につけているコウテイペンギン。

寒さと空腹に耐えて卵をあたため続けるオスは、時に命を落とすこともあるそうです。
けれど、過酷な環境での繁殖活動は、産まれてくる子どもたちのためにコウテイペンギンのDNAに刻み込まれた安全策でした。

命をかけて子孫を残す。
現代の人類に、失った大切ななにかを教えてくれるような気がします。

2023年、地球温暖化の影響でコウテイペンギンのヒナがほぼ全滅したという発表がありました。
南極の氷が例年より早く溶けてしまったため、まだ泳げない状態で落水したことなどが主な原因ではないかと推測されています。

コウテイペンギンの動画はこちら

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