ワシントン条約とは
希少な野生動植物の国際的な取引を規制する条約、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)について説明します。
ワシントン条約の概要

ワシントン条約は、1973年にワシントンD.C.で採択された国際条約で、正式名称を「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」といいます。
野生動植物の過度な国際取引を規制し、種の保存を図ることを目的としています。
Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora、略してCITES(サイテス)。
背景と目的
20世紀に入り、野生動植物の国際取引が急激に拡大し、多くの種が絶滅の危機に瀕するようになりました。
特に象牙、毛皮、薬用植物などの需要が高まり、乱獲や密猟が深刻化したため、国際的な取引規制の必要性が高まりました。
規制の仕組み
条約では、保護の必要性に応じて野生動植物を3つの附属書に分類しています。
附属書Ⅰ(最も厳格な規制)
絶滅のおそれが最も高い種で、商業目的の国際取引は原則禁止されています。学術研究や繁殖などの特別な目的に限り、輸出入許可証が必要です。例:ジャイアントパンダ、トラ、アフリカゾウの一部個体群など。
附属書Ⅱ(取引管理が必要)
現在は必ずしも絶滅の危機にはないが、取引を規制しなければ絶滅のおそれがある種です。輸出許可証が必要で、持続可能な取引のみが認められます。例:ワニ類の多く、ランの多くの種など。
附属書Ⅲ(締約国の要請による規制)
締約国が自国内での保護のため、他国の協力を求めて国際取引の規制を要請する種です。
実施体制
各締約国は管理当局と科学当局を設置し、許可証の発行や取引の監視を行います。
日本では経済産業省が管理当局、環境省が科学当局となっています。
ワシントン条約の現状と今後の課題
現在、約180カ国が締約しており、約38,000種の動植物が規制対象となっています。
しかし、密輸や違法取引は依然として深刻な問題で、特にサイの角、象牙、トラの骨などの需要は根強く、取り締まりの強化が課題となっています。
また、気候変動や生息地の破壊など、取引以外の要因による種の減少も問題となっており、他の保全施策との連携が重要になっています。
ワシントン条約は野生動植物保護の重要な国際的枠組みとして機能していますが、違法取引の根絶と持続可能な利用の両立が今後の大きな課題となっています。